人生を変えた「上を向く」力
ディレクター(以下、D):安斎さんは全国の花火会場を駆け回っていらっしゃいますが『人生を変えた花火との出会い』を教えていただけますでしょうか。
安斎:一言で言うと、花火はやっぱり「人を上に向かせる力がある」というところです。誰しもが必ず上を向くじゃないですか。これって、花火くらいしかできないことだと思うんですよ。……実はですね、私、もともとは花火が苦手だったんです。
佛願:あぁ、でもなんか、そうなんだろうなって。見てて感じてました(笑)。
安斎:はい。なぜ苦手だったかというと、とにかく人混みが得意じゃなかったんです。田舎の大自然の中で育ったので、人が集まる場所に昔からあまり慣れていなくて。
そんな中、2011年の東日本大震災で実家が被災しました。原発の影響もある地域だったので、「この先どうなるんだろう」と、家族のことも含めてずっと不安を抱えていました。自分自身もかなり塞ぎ込んでしまって、仕事を辞めて地元へ戻るべきなのか……そんなことばかり考えていた時期だったんです。
その時に、たまたま友人が「お前の地元には、いい花火大会があるんだから、気分を紛らわしに行ってみたらどうだ」と勧めてくれたのが、ふるさと福島の「須賀川市釈迦堂川花火大会」でした。
佛願:地元の花火!
安斎:その花火を間近で見た瞬間が、まさに私のターニングポイントになりました。当時は「この先どうなるんだろう」「故郷は大丈夫なんだろうか」って、不安なことばかり考えていたんです。
でも、ふと気づいたら、自分が夜空を見上げていた。周りを見ても、みんな同じように上を向いていたんですよね。「あ、これなんだな」って思いました。自分だけじゃないんだって。その感覚に、すごく救われたんです。だからこそ、私は「上を向く」ことの大切さを信じています。
今って、スマホを見て下を向く時間も多いじゃないですか。だからこそ、みんなで同じ空を見上げる時間って、すごく大事だと思うんです。ね、佛願さん。こういう感覚って、子供たちにも伝えていきたいですよね。
佛願:そうですね。
安斎:みんな同じ「上」を向きますからね。これもまたいいんですよ、今でもそれは変わらない。花火は上に上がるから、自分も上を向く。何か仕事で辛いことがあった時も、次の花火があるからって頑張れるし。
佛願:めっちゃその「上を向く」っていうワード、いいと思うんですよね!この前テレビで見た、昭和の名曲の特番なんかでも、いい歌はたくさんあるんですが、やっぱり一位は『上を向いて歩こう』やったんですよ。
安斎:ああ、そうですね。いい曲ね、幸せは雲の上にありますから。
佛願:めっちゃいいですよね!なんていうか、僕は「思いを言葉に変える」っていうのが苦手なんで。みんな同じ方向を見て、おじいさんでも子供でも、老若男女問わず空を見上げる。やっぱり下を向いてたらダメなんですよね。

結婚式、二つの星、そして夜空の「道しるべ」
佛願:ちょっと余談なんですけど、話がずれるかもしれないんですが、僕、2009年の結婚式の時にね、妻に「星」をプレゼントしたんですよ。
安斎:おぉっ、星ですか!?それはすごいじゃないですか!
佛願:「スプリングブルック天文台」っていう、NASAも公式に認めてるような所なんですけど。そこで遠くのちっちゃな星に、名付けができるんですよ。一応、証明書もあって、月の土地を買うみたいな感じでちょっと怪しいんですけども(笑)。そこに僕&妻の名前をつけたんです。で、それをプレゼントする時に、「やっぱり上を向いて歩いていかなあかん」っていうようなことを、参列した皆さんの前で誓ったんですね。あぁ、それを聞いて「上をむくっていいなぁ」って素晴らしいなぁって思ったんですよね。
安斎:奥様に、永遠の輝きをプレゼントされたわけですね。
佛願:はい。
安斎:「佛願星」っていうのが宇宙にひとつあるわけですね!
佛願:そう、北斗七星の近くなんですけど。
安斎:それはもう、お二人にとっての「道しるべ」ですね。これから先、人生には色んなことがあると思いますけど、そんな時でも、その星を見上げながら歩いていけるって……もう最高じゃないですか。ロマンチックです。
D:ありがとうございます。りんくう花火の会場は夜空もすごく綺麗なので、もしかしたら花火の向こう側に、その星が見えているかもしれないですよね。
佛願:(笑)。
安斎:あ!今年のMCでそれ入れてくださいよ。「会場の皆さんにお知らせしたいのですが、あそこに見えるのが佛願さんの星です!」「僕の星です!」って(笑)。
D:実は会場のすぐ近くにも結婚式場やホテルもあります。今の「星」のエピソードを聞いて、花火と、星と、そして結婚式場……この三つが夜空の下でコラボレーションできたら、ものすごく素敵な物語になりますよね。
安斎:うん、いいですよ、それ。絶対面白い。
佛願:はい、ありがとうございます(笑)。

「主催者の熱」と「子供たち」へのブレない視点
安斎:私もりんくう花火さんは当然知っていましたし、佛願さんともFacebookで繋がりはあったんですけど、昨年初めて会場へ伺って「また来たいな、すごくいいな」と思ったんです。
その理由は、やっぱり「実行委員が熱い!」これに尽きます。特に実行委員長(笑)。もちろん、伝統や歴史を重んじる大会にはそれぞれの素晴らしさがありますが、りんくう花火さんのように、「自分たちの街で、自分たちの手で、本気で作り上げている」という熱量は、お客さんにもすごく伝わってくるんですよね。
佛願:うん。
安斎:歴史も長く規模も大きな花火大会の主催者さんは、組織として洗練され、完成された運営の美しさがあります。それは本当に素晴らしいことです。その一方で、りんくう花火さんのように、「実行委員長をはじめ、運営に関わる一人ひとりの顔と熱量が見える」という体温のある大会には、また違った魅力があるんですよね。お客さんにもその想いがしっかり伝わるし、心から応援したくなります。
佛願:嬉しいです。
安斎:それと、もう一つ。りんくうさんは「子供たち」という軸をずっとブレずにやってこられている。僕の「上を向こう」と、佛願さんの「上を向いて歩こう」が、子供たちの未来に繋がっている。単純な玉の数では語れない「空を見上げる素晴らしさ」が、ここにはあると感じました。
佛願:ありがとうございます。去年、実際にお会いした時も、安斎さんお疲れ様って言ってくれましたよね。
安斎:ええ、大変だったと思うんですよ。でも、ああいうのって楽しいでしょ?(笑)
佛願:そうですね!(笑)
テレビの中の人が目の前に!「主催者リスペクト」の真意
佛願:今更ですが、1個質問してもいいですか。本部にまで来ていただいて「名刺交換お願いします」って声をかけていただいた時、僕、本当にびっくりしたんですよ。「なんか見たことある人や!そうや、テレビで見てる安斎さんや!!」って。メディアの中の存在だった人が、わざわざ挨拶に来てくれた。なんであんなアクションを起こしてくれたんですか?
安斎:前々から実際にりんくう花火を見に行きたいと思っていたのもありますが、一番は知人の高名な花火フォトグラファーが「りんくう花火、すごく良かったよ、関東からは遠いけれど見に行ったほうがいいよ」と絶賛していたんです。実際に見に行かれた方の「すごく良かった」というリアルな声は、私たち花火ファンにとってもやっぱり一番の原動力になりますから。
あと、もう一つの大きな理由は、花火打ち上げを担当されている日本橋丸玉屋さんです。全国各地の名だたる大会で、数々の演出を拝見していますが、日本橋丸玉屋さんはとにかく「魅せること、感動させること」において国内トップクラスの手腕を持つプロ集団だと思っています。 りんくう花火のロケーションや実行委員長の想いと、日本橋丸玉屋さんの演出がどう融合するのか。それを現地で体感したかったんですよ。
佛願:なるほど。そうだったんですね。
安斎:あと、別に「佛願さんだから挨拶に行った」んじゃないんですよ、って言ったら失礼なんですけど(笑)。
佛願:はい(笑)。
安斎:でも、「主催者へのリスペクト」の気持ちは常に持っていたいんです。これだけ大きな大会を形にするのは本当に大変なことですし、私はやっぱり「観る側の最前線」で花火を楽しませていただく立場に徹していたい(笑)。
だからこそ、素晴らしい大会を作り上げてくださった方々には、機会があれば直接「ありがとうございました。素晴らしい花火でした」とお礼をお伝えしたいなと思っています。
SNSなどで感想を発信することはいつでもできますが、直接お会いできたその一期一会の機会を大切にして、お顔を見て感謝を伝える。タイミングが合って、直接「ありがとうございました」って言える時は、やっぱりこちはも嬉しいんですよね。
佛願:ずっと、なんでやろなって思ってました。
安斎:本当に裏も表もないんですよ(笑)。ただ純粋に、一人の花火ファンとして、直接お顔を見て「素晴らしい花火をありがとうございました」とお伝えしたかった、それだけなんです(笑)。
花火を観させていただく立場として、感謝の気持ちをストレートに表現するのはごく自然なことですし、それが私なりの主催者さんへの敬意なんですよね。
佛願:本当にびっくりしたし、嬉しかったです。実行委員長やってるから、忙しすぎて他の花火大会もなかなか見に行けないし。僕はテレビやFacebookで安斎さんを拝見していて、「メディアですごく目立っている人やな」とずっと思っていましたから。そんな人が本部に来てくれた時は、「まさか直接繋がれるとは」と大感激でした。
安斎:いえいえ。でもメディアに出演しているからといって花火に詳しくないですよ(笑)私はあえて花火を専門的に論評する立場ではいたくないんです。ただ純粋に、「この花火の感動を、みんなで共有したい」っていうのが私のスタイルなんですよ。花火師さんたちが積み重ねてきた技術や芸術性も、もちろんめちゃくちゃ凄いですし、心からリスペクトしています。ただ、会場に足を運ぶお客さんの多くは、難しい理屈抜きで、純粋に空を見上げてワクワクしたい方々じゃないですか。
佛願:ええ、そうですね。
安斎:私は、会場で空を見上げている皆さんと同じ目線に立って、自分が現場で肌で感じた熱量を、そのまま自分の言葉で届けたいんです。難しい解説はそれこそ専門家に任せておけばいいわけで(笑)、私はみんなと一緒に「いまの最高だったね!」って笑顔で言い合える存在でいたいんですよね。
10回記念大会、りんくう花火をこう楽しんでほしい
■「ライブ会場」としてのりんくう花火
D:いよいよ開催まであと1か月です。現在、最後の詰めをされているところだと思いますが、「こうやったら、りんくう花火をもっと楽しめるよ!」というポイントをぜひ教えていただけますか?
安斎:できればこうしていただきたいな、というのが1つあって。これは別にりんくう花火さんに限った話ではないのですが、主催者さんにはやっぱりある程度、花火を打ち上げる「煙火店の名前」を表に出してほしいなと思うんですよ。煙火店さんによっては、「自分たちは裏方だから」という職人気質なところもまだあります。でも、私は煙火店さんを最高の「アーティスト」だと思っていますし、花火は、そうしたアーティストたちの魂がこもった「作品」だと思っているんです。 当然ですが、アーティストによって作品や演出にも、それぞれの特長がありますから。
だからこそ、「どんな煙火店さんが、どんな想いで打ち上げるのか」が分かった方が、観る側も「アーティストのライブ」を観に行くようなワクワク感を持てますし、花火の見方や感じ方もまた違ってくると思うんですよね。
佛願:そうですね。
安斎:私は、りんくう花火という場所は一つの素晴らしい「ステージ」だと思っています。そこで、アーティストである日本橋丸玉屋さんが、佛願さんや実行委員会の熱い想いを汲んで、それを花火という形に昇華させる。そこには一つの芸術があり、ストーリーがあるわけです。
日本橋丸玉屋さんは、花火を「魅せること、感動させること」において国内トップクラスの手腕を持つプロ集団です。 演出のプロフェッショナルである彼らが、りんくうの海を舞台に、どんな作品や演出を披露するのか。そういうアーティストとしての凄みがお客さんに伝われば、「ぜひ行ってみたいな!」って、さらにワクワクすると思うんですよね。
■ アクセスの良さと、対岸の夜景
安斎:会場の雰囲気というところも、もっと伝えていくべきポイントかなと思いますね。りんくう花火は「アクセスもいいよ」ってところもそうなんですけどね。海に台船を浮かべててね、会場からは(対岸の)夜景もセットで楽しめますよね。
佛願:はい、そうですね。関空が対岸にありますからね。
安斎:夜景と花火。このロケーションも、ぜひ堪能してほしいポイントですね。

■「知っている曲」が思い出を倍増させる
安斎:音楽と花火をシンクロさせて打ち上げる「ミュージックスターマイン」にフォーカスすると、やっぱり「自分の知っている曲に合わせて打ち上がる」ことで、思い出も何倍にも膨らむわけですよ。もちろん、0.03秒単位で音と花火をシンクロさせる日本橋丸玉屋さんの技術は本当に凄いんですけど、お客さんにとっては、そうした技術論以上に、お気に入りの曲にあわせて花火が打ち上がる瞬間のほうが、理屈抜きで心に響くと思うんです。
佛願:うん(頷く)
安斎:だからこそ、「日本橋丸玉屋さんって、こういう演出を手がけているアーティストなんだ」って知った上で観ると、また花火の見方や感じ方も変わってくるんですよね。りんくうのロケーションで、どんなステージを見せてくれるんだろうって、よりワクワクしながら楽しめる。そういう演出を現地で体感できること自体、すごく贅沢な価値だと思うんですよ。
佛願:そうですね。
安斎:あとは、どんな曲で打ち上がるか。自分の知っている曲で上がったら、単純に盛り上がりますからね。「サビのここでこの花火がバーンと開くよ!」なんていうのが分かりやすく伝わればいいのかなと。
佛願:確かに、全部の火薬量を調整して、タイミングを計算して……なんていう技術論を伝えるのは、なかなか難しい(笑)。
安斎:(自分で言ったけど)マニアックな話になっちゃったね(笑)。
■「僕たちのスマイル花火大作戦」こだわりのフィナーレ
安斎:あと去年びっくりしました。ニコちゃんマークの尺玉上がったじゃないですか。型物花火ってあまり10号では作らないんですけど、あれはびっくりしましたね。型物花火って、普通は大きくても5号くらいで作るものなのに、10号であの「スマイルマーク」が上がったのはね。
佛願:そうなんですよ。りんくう花火は副タイトルが「僕たちのスマイル花火大作戦」と言って、「日本で1番スマイルを打ちあげよう」というのがありまして。第1回目が始まった時に、(日本橋丸玉屋の)岩野さんが「ニコちゃんを全国から集める!」ぐらいの勢いで始まって、そこからずっとあげてるんですけどね。 型物で魚とかハートとか、ああいうのを見たらやっぱり「わー!」ってわかりやすいので。
安斎:うん、いいですね。
佛願:ニコちゃんはやっぱり分かりやすい。一般のお客さんには「五重芯(いつえしん)」とか言っても伝わらないですが、型物で魚やハート、スマイルを見たら、理屈抜きで「わーっ!」ってなりますから。
安斎:会場で聞いてても、「型物花火」とあと「千輪(せんりん)」の歓声は断違いですよ。
佛願:僕、千輪が1番好きなんですよね。なぜかって言ったら「あれ、失敗したんかな?」みたいな静寂のあとで、ぶわーって咲くから。
安斎:そうそう!不発かなと思わせてから、ワンテンポ遅れてパアアア!ですからね。
佛願:だから僕、フィナーレにすごくこだわってて。「あ、終わったんかな?」みたいな感じの後に、最後一斉に咲かせる。やっぱりずっと十号ばかり上がっていたら飽きてしまうので、小さいのも混ぜながら緩急つけてインパクトを与えないと。「来年も見に行きたい!」って思ってもらえるのは、やっぱりフィナーレが一番記憶に残るからだと思うんですよね。
安斎:その通り!やっぱりお客さんって、最後の「締め」をすごく楽しみにしているんですよね。フィナーレに向かって会場全体のボルテージがどんどん上がっていって、最後に「うわぁー!」ってなる、あの一体感がたまらない。
佛願:そう、会場に足を運んでくださる大勢のお客さまは、純粋に花火を楽しみにしてくれている方々なんですよね。主催する側が、自分たちだけのマニアックなこだわりや理屈に偏りすぎて、お客さんを置いてけぼりにしたら絶対にダメやと思うんです。
安斎:おっしゃる通り!花火って、ただ上げ続ければいいってものでもなくて、緩急や流れ、つまりストーリー性があるからこそ、お客さんの感情もどんどん引き込まれていくんですよね。 りんくう花火が「体験」として記憶に残るのは、そういう“お客さんがどう感じるか”をすごく大事にされているからだと思いますよ。
居酒屋の一言から始まった、市民の手による「復活花火」
佛願:安斎さんに言っていただいた「実行委員長が熱い」っていうのが、実は一番嬉しいです。というのも、りんくう花火の原点には、街の苦しい時代があったからなんです。昔、関空開港を記念した大きな花火大会があったんですが、財政難でなくなってしまって。当時の泉佐野は「第二の夕張市」なんて言われるほど暗いニュースばかりで、市民も元気がなくなってた。そんな時、誰か一人が居酒屋でポツリと言ったらしいんですよ。「昔、りんくう花火をやってた時は良かったよね。もう一回できんのかな?」って。
安斎:一市民の、ひとことから。
佛願:そうなんです。それで「できるか分からんけどやってみよう!」って火がついて。募金や協賛を2年がかりで集めて「行政に頼り切るのではなく、自分たちの手で街を明るくしよう」って僕らがようやく立ち上がった。その一番はじめの縁で初期メンバーにいてくれたのが、日本橋丸玉屋の岩野さん(現社長)だったんです。当時は岩野さんも泉佐野に住んでいて、アクセスがいいゲートタワービルに丸玉屋さんの支社もあった。「花火のことだし、岩野さんと対等に喋れるのは佛願さんしかおらん」ってメンバーに言われてね(笑)。
安斎:岩野さんもまた、根っからの花火好きですよね。常に「どうしたらもっとお客さんを笑顔にできるか」を本気で考えている、探究心の塊みたいな方だと思うんです。
その岩野さんが「実行委員長が熱い大会が一番いい」と言ってくれたのは、まさに佛願さんたちの “何もないところから立ち上げてきた熱量” を、すぐ近くで見ていたからなんでしょうね。
佛願:「赤川花火大会」なんかも実行委員長がめちゃくちゃ熱いと聞きますけど、やっぱり「思い」があるところは違う。僕はまだ北の方の花火までは行けてないんですけど、妻も実行委員なので、二人で西日本を中心に色んな大会を回って「ここらへん、もっとこうしたいな」っていつも話してるんです。
PL花火の衝撃と、安斎流「音」の哲学
佛願:そもそも僕が花火を好きになったきっかけは、子供の頃に見た「PL花火芸術」なんです。40年以上前、小4の時に親に連れて行ってもらって。あのフィナーレの光と音がもう凄まじくて……「爆発したんじゃないか!?」って震えるような強烈な体験。それが原体験ですね。
安斎:出ましたね、伝説のPL! 大阪の方は皆さんそうおっしゃいます。あのフィナーレは今も語り継がれていますよね。
さっき佛願さん、すごくいいことをおっしゃいました。「光と音」に衝撃を受けた、と。花火の魅力ってよく「音と光の芸術」と言われますけど、私は「音があるからこそ、光が映える」と思っているんです。音速は光速を超えられないから、絶対に「ドーン!」という音は遅れて届きますよね。でも、その絶妙な“遅れ”があるからこそ、光の余韻がさらに際立つ。
これ、人生も一緒だと思うんですよ。自分には絶対超えられない人がいたとしても、自分が「音」のように存在することで、その人が輝き続けるっていうこともあるじゃないですか。
佛願:うん、うん。
安斎:組織でもそうですよね。「うちの上司が評価されているのは、部下の自分が結果を出しているからだ」くらいに思って(笑)。自分は主役の「光」にはなれないかもしれないけど、そう言い聞かせて仕事に励んでいます(笑)。
佛願:安斎さん……今さらですけど、普段は何をされている方なんですか?(笑)
安斎:私はただの普通のサラリーマンですよ(笑)。平日は普通に会社で働いています。
佛願:会社員!いや、ずっと謎だったんですよ。その時間とかお金とか、一体どうやって捻出されているんかなって。
安斎:サラリーマンですから、正直お金なんてないですよ(笑)。ただ、有給休暇は取れるだけ取ります。ただやっぱり行きたくても行けない時もあるわけで…そんな時には自宅の花火シアターで花火鑑賞しています!
佛願:ご自宅に花火シアターですか!
安斎:あ、私、音フェチなんですよ。光を絶対超えられない「音」を、いかに家で忠実に再現するか。もう、それを追求しすぎて、リビングにウーファーを6発並べて、家が揺れるような爆音で聴いてます(笑)。
佛願:いや、すごいですね。それテレビで見ましたわ(笑)。
安斎:特に尺玉の音は至高ですからね。やっぱりあの全身で感じる衝撃がたまらないんですよ。
佛願:ほんまにね。僕、あの筒から出る時の「ポンッ」っていう発射音も結構好きなんですよ。
安斎:あぁ、いいですね!花火には2つの音がありますからね。筒からポンッ!と出て、数秒かけて上がって、パッと開く。その後に遅れて「ドーン!」とくる。これがまた、いいんですよ。
佛願:最高ですね。

「りんくう花火」へのエールと安斎プロデュース版りんくう花火
D:りんくう花火は2012年からボランティアで動き出し、ようやく今年、第10回という節目を迎えます。これまでの歩みを支えてきた地域の方々へのメッセージや、安斎さんがもし「ワンコーナー自由にプロデュースしていい」と言われたら、どんなアイデアがあるか教えていただけますか?
安斎:ああ、いいですね!日本橋丸玉屋さんは「文字打ち」もすごく得意な煙火店さんなので、私なら「10」という文字を夜空に打ち出してほしいです。「1」と「0」で10周年。文字打ちはやっぱりお祝い感が出ますから。
佛願:実はですね、今年のテーマの「ありがとう」って文字花火をやろうと思ってたんですよ。ただ……昨今の物価高騰が凄まじくて。色々見積もりをしたら、もうビビってしまいましてね(笑)。2023年のコロナ明けの時も、開催はできたけど赤字になってしまって、メンバーで自腹で補填するという恐ろしい経験もしているんです。だから今年は、花火の玉数を死守するために、調整として台船を一隻に絞ったんですが、そうすると文字打ちは保安距離の関係で見えにくいし、もったいないよねってことで、泣く泣くやめる方向になったんです。
安斎:台船一隻だとそうなりますよね。それなら、花束を作りませんか?台船の上で、下でトラ(虎の尾)や小型煙火を打ち上げて、上で千輪とハートを咲かせる。フォトグラファーさんにばっちり撮ってもらえば、最高に美しい「花束」になります。来年のポスターにも使えますし、動画でも一生残りますよ!
佛願:なるほど!それは素晴らしいな。ハートは絶対に入れたいです。
安斎:ワンポイントで、一発だけ10号の「スマイル」を打ち上げる。かなり贅沢ですけど、インパクトはありますよ(笑)。 それも、できれば音楽なしでやってほしい。
佛願:音楽なしで、ですか。
安斎:ええ。実行委員長の「この10年にありがとう、これからの10年もよろしくね」っていうご挨拶があって、カウントダウンでバーン!と一発上がる。その後にいつもの華やかなプログラムがスタートする。これ、インパクトは相当強いと思いますよ。
佛願:それはいい!インパクトは大事ですからね……。安斎さん、お話しするのが本当に上手ですよね。想いはあるけど言葉にするのが苦手な僕にとって、安斎さんは最高のアドバイザーです。花火のコンサル料、高くないですか?(笑)
安斎:大丈夫です、かかりません(笑)。
佛願:ありがたい。
安斎:私は、高田明さん(ジャパネットたかた創業者)を崇拝していて、あの人の番組をめちゃくちゃ見て勉強したんですよ。高田明さんもモノづくりのプロではないけれど、開発者の想いやこだわりを汲み取って、画面の向こうの人に「夢」を見せながら、その商品の魅力を熱く伝えていくじゃないですか。私が花火を紹介するスタンスも、それに近いんです。私は作り手ではないので、細かい技術論を語るというより、私がおすすめする花火や、花火の楽しみ方を通して、「行ってみたい」「見てみたい」ってワクワクしてもらえるような“感動の代弁者”でありたいんですよね。
花火を魅せるのではなく、「体験」をしてもらう
安斎:私は「花火を魅せる」のではなく「体験をしてもらう」ことが一番大事だと思っています。たとえば、有料席のお客さんに、プロが撮った写真を後日プレゼントする。スマホでは撮れないような一枚。それが10年、20年経った時に「お前が子供の時に行った花火、綺麗だったな」と家族で語り継ぐきっかけになる。何か「残るもの」が必要なんです。
佛願:体験……。そういえば、昨日、僕も地元小学校で開催している花火教室で「花火おじさんのステッカー」を配ったら、子供らが信じられないくらい喜んで夢中で集まってくれたんです。「もう一枚ほしい!」って。シール1枚でも、思い出に残るんやなって。
安斎:まさにそれです!もちろん、大規模の花火大会で「凄かった!」って感動する体験も最高なんです。でも私は、「誰と、どこで、どんな花火を見るか」で、その花火の印象って大きく変わると思っていて。10年後に、「結婚前に二人で来たね」とか、「子供が小さい頃、一緒に見たね」って思い出がよみがえるような、そんなメモリーを残せる「りんくう花火」であってほしいなと思います。
倒れるまで走り抜ける「熱い思いを花火に乗せて」
佛願:今日はお話しできて本当に良かったです。自分の中で「上を向く」という言葉がストンと落ちました。正直、葛藤もあったんです。近隣で大きな大会が始まって、どうしても規模や発数で比べられてしまう。「負けたくない、もっと発数を増やさなあかんのちゃうか」って、背伸びしそうになったこともありました。でも今日、安斎さんの話を聞いて、間違ってなかったと思えました。他所は関係ない。自分がやりたいことをブレずにやっていけばええんやって。
安斎:本当にそうですよ。歴史があって規模の大きな大会には、そこでしか味わえない圧倒的な迫力や素晴らしさがあります。それはそれで、花火界にとって本当に大切な宝物なんです。
でも、りんくう花火が目指すべきなのは、そうした規模の競争ではなく、「ここでしかできない唯一無二の体験」があるかどうか。大切なのは花火玉の数や大きさだけじゃなくて、「今年も来て良かったな」「またあの景色を見たいな」って思ってもらえる時間を届けられるかどうか、だと思うんですよね。
佛願:そうですよね。うちは「海上」から打ち上げるから、演出にも安全面にも、ものすごく手間がかかる。実は僕、普段はセールスドライバーとして朝から晩まで街を走り回ってるんです。仕事が終わって携帯電話を見るとLINEとメールの着信履歴が「花火の問い合わせ」でいっぱいになってて。ずっとプレッシャーに追いかけられてます。もう年齢も年齢やし、死にかけてるんですけど(笑)。
安斎:ははは(笑)。でも、本当に頭が下がりますよ。それだけ大きなプレッシャーを感じるっていうのは、佛願さんがこのりんくう花火に本気で向き合っている証拠ですからね。実行委員長って、どうしてもお客さんの笑顔のために、自分のことを後回しにしがちですし。
佛願:そうなっちゃいますね。
安斎:ただ、本当に体だけは資本ですから。子供たちのための「スマイル花火」と言いながら、仕掛け人の実行委員長が無理して倒れちゃったら目も当てられないですからね(笑)。本当に無理だけはしないでください。
佛願:ありがとうございます。安斎さんに原動力を補充してもらえました。あと1ヶ月、倒れんように走り抜けます!
かつて絶望の中にいた一人の男の人生を変えたのは、夜空に上がった一輪の花火でした。
「花火には、人を上に向かせる力がある」
2026年6月6日、ついに10回目の節目を迎える「りんくう花火」。
この開催を目前に控え、テレビやメディアで“花火の代弁者”として活躍する花火マニア・安斎幸裕氏と、街の復活を信じて走り続けてきた実行委員長・佛願(通称:花火おじさん)による特別対談が実現しました。
「なぜ、りんくう花火はこんなにも人の心を熱くさせるのか?」
安斎氏が語る、他の大規模大会にはない「実行委員の圧倒的な熱量」。
そして佛願氏が語る、14年前の居酒屋の一言から始まった、手作りゆえの純粋な「復活劇」。
技術論や規模の比較では決して語れない、私たちが「りんくうの夜空」に込めた想いのすべてを紐解きます。
10回記念大会を祝う「一夜限りの花束」のアイデアから、全てのお客様へ届けたい「本当の感動」の正体まで。 読めば、今年のりんくう花火がもっと好きになる。10回分の「ありがとう」を込めた、魂のメッセージをぜひ受け取ってください。
参加者
【ゲスト】花火マニア:安斎 幸裕 氏
りんくう花火実行委員会 実行委員長:佛願 真浩(花火おじさん)
参加者
【ゲスト】花火マニア:安斎 幸裕 氏
りんくう花火実行委員会 実行委員長:
佛願 真浩(花火おじさん)

花火マニア 安斎 幸裕氏×りんくう花火実行委員長
なぜ花火は人を「上向き」にさせるのか?
〜花火を愛する男たちが語る、夜空に咲く「光と音」の哲学〜
花火マニア 安斎 幸裕氏
×
りんくう花火実行委員長
なぜ花火は人を
「上向き」にさせるのか?
〜花火を愛する男たちが語る、
夜空に咲く「光と音」の哲学〜
Special
スペシャルコンテンツ「りんくう花火10回記念大会Special対談」vol.2
花火マニア・安斎幸裕
公式サイト https://hanabimania.jp/
1981年福島県生まれ。日本で唯一の「花火マニア®(登録商標)」。震災で被災後、故郷の花火に救われた原体験から全国を巡る活動を開始。現在までに180カ所以上を観覧し、TBS『ひるおび』(2026年5月生出演)『マツコの知らない世界』(2025年10月放送)をはじめメディア出演は90本を超える。独自の「音」の哲学を持ち、現在は鑑賞のみならず、全国20カ所以上の花火大会で広報PRや運営支援に携わるなど、花火文化の継承と発展に尽力している。
りんくう花火(ENJOY!りんくう)
次回の開催日 2026年6月6日(土)
場所 泉佐野市りんくうマーブルビーチ / りんくうプレミアム・アウトレット シーサイドパーク
2026年で第10回を迎える、「子どもに笑顔を」をテーマにした本格的な花火大会です。日本の夕日百選に選ばれたビーチや関空を望む絶好のロケーションで、日本一多くの「スマイル花火」が夜空を彩ります。

